戦後をターニングポイントに日本人の生活は欧米化し、驚くべき変貌を遂げてきました。世界でも有数の経済国家に成長した日本は物質的にも恵まれみんなが教育を受けられ、飢餓とも無縁になりました。さらに衣食住という生活基盤も世界のどんな国と比較してもひけをとらないくらいにモノが満ちあふれています。
しかしその反面、半世紀を経過し定着したはずの欧米スタイルの生活習慣に対して、徐々に順応しきれない精神面、健康面も浮き彫りになってきたといえます。具体的にその間題点を総括し列挙してみると、
- 成人病の加速度的な急増
- 精神的荒廃に伴う犯罪や自殺率の増加(虐待、いじめ、引きこもりなども含む)
- 個人レベルでの自己責任の喪失
などが挙げられます。
特に1 の成人病の蔓延は深刻な状況で、ここ数十年の問に糖尿病は約27倍、アレルギー疾患は10倍以上、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患も10倍以上、欧米型悪性腫瘍(乳ガン、大腸ガンなど) は比較しようがないほど急増しています。
今後も加速度的に蔓延する成人病の急増率には、歯止めがかけられないのが今の現状です。この健康面におけるさまざまな問題点に対し十分に分析を行い対策を立てなければ、順応しきれないという生易しいものでなく、「淘汰」という2文字をも考えなければならない時代が来るということを、私たちは自覚しなければならないでしょう。
人口という観点から見ても日本人の出生率は、ここ数年で頭打ちになりいずれ3000万人レベルまで激減することが予測されています。
私たちは、この戦後半世紀の生活を振り返り、日本人が何に順応できないためにこのような現状に追い込まれているのか、その原因を究明し、対策を立て、国民の誰もが実践できる形で21世紀を生き抜く新しい健康学を打ち立てていかねばなりません。
そのためには、疾病に対する捉え方も、今までの医学が推進している「治療という観点に立った原因究明・治療」だけでなく、「予防という観点に立った原因究明・未病」という新しい健康学を付加していかねばならないでしょう。
つまり現状を把握し、その原因を究明し、新しいビジョンを打ち立て、そのために何をしていくかを提示していかなければならないのです。
そこでビタミン・ダイエットでは予防・未病という観点に立ち、現代人を悩ませ苦しめる心身に出てくる症状は、私たちの内在環境(遺伝や代謝システム、生活習慣や思考習慣)が、外部環境( 食環境、生活環境やライフスタイルから生じるストレス、高齢化・人口減少社会など)と対帰し、順応しきれなかった結果として出てきたものと考えて対応していきます。それでは分かりやすく実例を挙げて解説してみましょう。
「糖尿病がなぜ、ここ数十年で約30倍近くも急増してしまったのか?」 もともと日本人は、米という難消化性デンプン質(レジスタント・スターチ) を数千年の間、主食としてきたために、吸収がゆっくりとしていて血糖の上昇も緩やかなため、膵臓からのインスリン(血糖を下げる唯一のホルモン) の分泌も緩除ですみました。
この日本人の米を中心とした食歴により、日本人の膵臓は急激かつ大量にインスリンを分泌し続ける能力を持ち合わせていないのです。これは、数千年に及ぶ長い食歴によりつくり上げられた日本人の代謝システムにおける宿命ともいえます。
それに対し、数十年の食環境の激変により代謝の早い加工食品や軟食で消化吸収の早い欧米食の氾濫から、現代人の膵臓には多くの負担がかかり続けていると考えられます。
そこにもう1 つ大きな要因が加わります。それは、飽食という新たな環境により発現する日本人の約40パーセント近くが保有している(世界で3番目に多い民族) 前述の倹約遺伝子です。これにより現代日本人は、どんどん脂肪を蓄え肥満になり、その脂肪細胞から分泌されるインスリンの血糖降下作用を妨げるホルモンの過剰分泌により、さらに膵臓よりインスリンを分泌せざるを得ないことになるのです。
つまり、ただでさえ無理をしている膵臓に肥満が加わると、インスリンが大量に出ているにもかかわらず、その効きが悪くなるため、さらにもっと大量のインスリンを分泌をしなければならなくなるのです。
それが持続すると膵臓が疲弊し、ついには破綻してインスリンを分泌できなくなり、糖尿病が発症するのです。糖尿病がこれほどまでに激増している最大の理由は、日本人の変えることができない遺伝や代謝システムという内在環境が、加工食品や欧米食という戦後導入された新しい食環境という外部環境に順応できないからなのです。
糖尿病は遺伝性のある疾患です。その遺伝性のある疾患がたった30~40年という一世代で27倍にも増加するなど、通常では起こり得ないことです。
よほど環境に順応できない原因があると考えて対処しなければ、恐竜が氷河期を迎え体温を維持できず滅びてしまったのと同じように、私たち日本人という民族も淘汰されてしまうということを意味しているのです。
日本人のように稀有な数千年にも及ぶ同じ食歴を持ち、それによりつくり出された代謝システムを持つ民族にとって、食環境の変化は命取りになりかねません。
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